そんなことは露知らず


先週、人間で言うなら救急車騒ぎを起こしたのにそんなことは何処吹く風。

母ちゃんはその救急費用が人間様のように税金で賄えないのを恨みに思っても〝母ちゃん!ご飯は?!〟って顔で平然としているサブローのツラを見て納得しているのか、困っているのか本人に訊くのが怖いから知らない。
東京の隣と言っても練馬の奥ぐらいでは野うさぎもいないと思われるので棄てるわけにも行かず、死ぬまで面倒を見ると腹を括ったらしい。

そんなことは露知らず、サブはコッチが挨拶してもシカトを決め込み自分の陣地たる押入れに引篭り気味だ。
時々、顔を見せてもまるで老人が〝お若いの、よく来たのぉ~〟と言わんばかりの顔をしている。

対してよつばの方はこちらは若い娘の癖に無節操なまでに〝オジサン!お土産は?!〟と言う顔をしながら後ろ足でぴょこんと座り、上体を起こして〝チョーダイ!〟のポーズ。
顔の前で前足を掻いて〝腹減った~~~〟と、言いたげ。
娘さん、やんちゃの盛りでアレコレと目新しいモノに目が行き、人間と見ればご飯をくれる奴と思い込んでいる節が十二分にある。
〝お嬢さん、人間はね…〟と言うシエル得意の長演説も耳を塞いで聞く気ナシ!
人が冷蔵庫を開ける度に〝アタイにニンジン出しなさいよ!〟と、目が要求しているのが分る。
若いということはお腹が一年中減っていると言う事とほぼ同義であるから、ついこの間まで大盛り三杯を食べていたシエルには説得力充分。